私が学習塾で取り組んでいる、講師向けの
《やる気のトリセツ(取扱説明書)》を数回に渡ってご紹介します。
●《やる気のトリセツ(取扱説明書)》
【注意】
人間に関することなので、全てを一概に言えるものではありません。
それでも、「やる気」に関して皆が共通の理解を持っていた方が、
生徒・保護者の混乱を避けられますし、教室全体での生産性は上がります。
新人講師が陥りがちな、よくある間違いなども書いてありますので、
まずこのトリセツを読み、内容を参考に、
一人ひとりに合わせて考え、行動していきましょう。
▼やる気スイッチOFF
《No.1》やる気を問題の中心にしない
入会面談などで、
「この子はやる気がないんです。やる気を引き出してください」
という保護者がいます。
するとそれを横で聞いていた子どもは、どんな反応をすると思いますか?
多くの場合、その場にいた子どもはムッとして反発の意思を見せます。
中には、表情を曇らせ、うなだれる子もいます。
そう、そうなんです。
やる気を問題にすると、やる気を引き出すどころか、
むしろやる気が萎えてしまうことが多いようです。
《No.2》問題の原因は、「やる気」以外にある
採用して間もない、研修期間中のA先生にこんな質問をしてみました。
「授業が始まるので席に着いたなり、すぐに机に伏せて身動きしなくなった生徒がいました。
その子はやる気があるでしょうか、ないでしょうか?」
すると、A先生は即座に答えました。
「明らかにやる気はないです」
本当でしょうか?
授業開始時に机に伏せてしまうのは問題ですが、
その背景には何かあったのでしょう。
たとえば、
・今日、学校で嫌なことがあった
・今日の部活がハードで、相当疲れている
・塾に来る前に、家族と喧嘩をした
・塾に来る前に、好きな子に告白をして振られた(←実際、過去にありました^^;)
ということがあったかもしれません。
むしろ、塾には来ているわけですから、
「やる気がない」と一刀両断するのはいかがなものでしょう?
生徒が問題の行動を起こしたり、「やる気がない」と発言したりしたとしても、
むしろ、問題の背景にある原因を探り、対策を練っていった方が良さそうです。
ちなみに、授業前に振られてきた男の子は、
「もうダメだ~」と言いながらも、授業の後半は集中できたようです。
担当講師が、話をじっくり聞いていたから、気持ちが落ち着いたのかな。
《No.3》他人のやる気を無理に引き出そうとしない
担当生徒の成績を上げようと必死になっている講師ほど、
そして、心理学やコーチングをかじり始めた講師ほど、
担当生徒のやる気を引き出そうと一所懸命努力している姿を見かけます。
一所懸命に取り組むことは素晴らしいことです。
やる気が発揮できるように導くことも、講師として必要な努力です。
ただ、「無理に」やる気を引き出そうとすると、問題が起こります。
なぜなら、人はおよそ「他人にコントロールされたくない」という本能を持っているからです。
特に注意しなければならないのは、以下のケースです。
・「~しないと、宿題を増やすよ」と罰則を与えるケース
・「~したら、~してあげる」と条件付き愛情を与えるケース
確かに、これらは一時的には効果が見込めます。
ただし、継続的にはうまくいきません。
むしろ、副作用もありますから、それを知らずに使うのは危険ですので、
取り扱いには十分気をつけましょう。
ちなみに、やる気は引き出すものではなく、
育み、活かすものだと思います。
適切な環境があれば、撒いた種は放っておいても芽を出すものです。
それを無理に引き出そうとして水をあげ過ぎたり、養分を与え過ぎたりすると、
成長の途中で腐ったり、大きくはなったけれど脆弱だったりします。
やる気も、適切な環境を与えて放っておいた方が、健全に育まれていくようです。
《No.4》やる気の天敵
やる気には天敵がいます。
どんなにやる気があったとしても、天敵がいるときは、その力を十分に発揮することができません。
やる気の天敵とは、どんなものがあるのでしょうか?
いくつか見てみましょう。
〈4-1〉過剰なストレス
過剰なストレスがあると、やる気どころではありません。
・睡眠不足である
・肉体的疲労が激しい
・喜怒哀楽のジェットコースターが激しい
・怒りなどの強い負の感情がある
こんなときは、どんなにやる気があっても、集中して行動できません。
まずは、心や体を休めるのが先決でしょう。
〈4-2〉不安・恐怖
激しい不安や恐怖に襲われると、やる気どころの問題ではありません。
やる気よりも勇気がある方が、立ち向かえるかもしれません。
ただ、それより簡単な方法があります。
不安や恐怖に襲われたら、それらを取り除く努力をすればいいのです。
人は、この先何が起こるか分からないと、不安になったり、恐怖を感じたりします。
逆に言うと、次に何が起こるのかわかっていれば、少しは安心できるものです。
たとえば、お化け屋敷で、次に何が起こるのか全て明確だったら、怖さも減るでしょう?
〈4-3〉発散
返信していないメールがある。
果たしていない約束がある。
読みかけの本がある。
やり残したレポートがある。
それらから逃れるために、TVを見たり、友達とおしゃべりをしたりしている。
未完了がたくさんあると、やる気エネルギーが発散してしまいます。
一つ一つ、完了させると、やる気エネルギーを活用できるようになることでしょう。
〈4-4〉混乱
一度にたくさんのことをやろうとして、
何から手をつけていいのかわからなくなるときがあります。
同時多発テロのように、パニックに陥ってしまいます。
やる気があっても、それどころではありません。
そんなときは、一度じっくり構え、やることを整理してみましょう。
混乱が収まり、やる気を活用できるようになります。
(つづく)
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